職場で「気が散る同僚」がいると、本来はサクッと終わるはずの仕事が何倍も時間がかかってしまいます。雑談を振ってくる人、タイピング音や電話の声が大きい人、愚痴や噂話が止まらない人。悪い人ではないと分かっていても、集中したいときには大きなストレスになりますよね。
しかも厄介なのは、「迷惑だからやめてください」とはっきり言いにくいことです。人間関係を壊したくない、空気を悪くしたくない、評価に響いたらどうしよう。そう考えるほど、我慢してしまい、仕事のパフォーマンスもメンタルもじわじわ削られてしまいます。
この記事では、そんな「気が散る同僚の対策」について、集中力や働き方の観点から、現実的で取り入れやすい方法をまとめます。結論から言うと、ポイントは次の3つです。
・同僚を「タイプ別」にとらえて、感情ではなく構造で理解すること
・まずは自分側のルールと環境を整えたうえで、角の立たない伝え方を選ぶこと
・それでもつらいときは、上司や専門機関に相談し「一人で抱え込まないこと」
この3つを意識すると、「うるさい同僚に振り回される側」から、「自分の集中時間を主体的に守れる人」へと少しずつシフトしていけます。あなたの働き方や職場環境に合わせて、できそうなところから取り入れてみてください。
この記事は、業務改善・働き方の見直し支援に携わってきたライターが、ビジネスパーソンへのヒアリングや生産性向上の知見をもとに、一般的な情報として解説しています。医療・メンタルヘルスなど専門的な判断が必要な場合は、必ず専門機関にご相談ください。
気が散る同僚に悩むのはあなただけではない
オープンオフィスやフリーアドレスで「他人の行動」が近くなった
近年は、壁やパーテーションの少ないオープンオフィスやフリーアドレス制の導入が進み、物理的に「他人の行動」が目や耳に入りやすい環境が増えています。話し声、電話の音、移動や立ち歩き、キーボード音など、以前なら個室に分散していた刺激が一つのフロアに集約されるようになりました。
こうした環境では、もともと集中力が高い人であっても、気が散る同僚の影響を受けやすくなります。つまり、あなたの集中力が弱いわけではなく「構造として集中しにくい環境」にいることが多い、という視点をもつことが大切です。
オンライン勤務でも起こる「気が散る同僚」の新しい形
リモートワークやハイブリッド勤務でも、気が散る同僚問題は形を変えて存在します。チャットの通知が頻繁に飛んでくる、ビデオ会議中に雑談が長引く、緊急ではないメッセージに即レスを求められるなど、物理的な距離が離れていても、デジタル上で集中を乱す要因は多くあります。
特に、業務時間中ずっとチャットが動いているチームでは、常に画面の一部が「他人の動き」に奪われている状態です。結果として、目の前のタスクに没頭する時間が細切れになり、終業時の疲労感だけが強く残るという状況に陥りがちです。
「自分が悪い」のではなく環境と相性の問題だと理解する
多くの人は、気が散る同僚に悩むと「自分の集中力が低い」「人付き合いが下手」と自分を責めてしまいます。しかし、集中力はもともと長時間持続するものではなく、外部の刺激に左右される、とても繊細なリソースです。
まずは「自分がダメだから集中できない」のではなく、「環境と相性の問題」が大きいと認識することがスタートラインです。そのうえで、どの部分を自分で変えられるのか、どこから先は組織や上司の協力が必要なのかを整理していきましょう。
気が散る同僚のタイプ別にみる原因と特徴
話しかけすぎる同僚:悪気はないが「時間泥棒」になりやすい
仕事中によく雑談を振ってくる同僚は、多くの場合悪意はありません。むしろ場を和ませたい、コミュニケーションを大事にしたいという前向きな意識から行動していることも多いです。しかし、作業中に話しかけられる度に集中は途切れ、もとの深い集中に戻るまでには時間がかかります。
特に、考える仕事や資料作成、プログラミング、企画書づくりなど、頭をフル回転させるタスクでは、細かな中断が積み重なると、大きなパフォーマンス低下につながります。
音や動きが多い同僚:無自覚な「ノイズ発信源」になっている
机を指でトントン叩く、椅子をガタガタ揺らす、電話の声が大きい、頻繁に席を立って通路を往復するなど、音や動きで周囲の注意を奪ってしまうタイプの同僚もいます。このタイプは本人に悪気がないケースも多く、「周りがどれだけ気にしているか」を想像できていないことが少なくありません。
一方で、音や動きへの敏感さは人によって大きく異なります。ほとんど気にならない人もいれば、わずかな音でも集中が途切れてしまう人もいます。そのため、単純に「うるさい人」と決めつけるのではなく、刺激への感じ方の違いがあることも理解しておくと、伝え方が少し優しくなります。
愚痴やネガティブ発言が多い同僚:集中だけでなくメンタルも削られる
仕事の愚痴や人の悪口、会社への不満を延々と話す同僚も、集中力の大きな妨げになります。耳に入る情報がネガティブな内容ばかりだと、脳はそれを処理しようとしてエネルギーを使い、気分も下がります。自分の仕事とは関係のない話であっても、精神的な疲労がじわじわとたまっていきます。
このタイプの同僚には、単に距離を置くだけでなく、自分の心の防御線を引くことが重要になります。「聞き役になりすぎない」「話題を変える」「時間を区切る」といった工夫が必要になります。
ここで一度、代表的な「気が散る同僚」のタイプと、やってしまいがちなNG対応、代わりに選びたい対応を整理しておきましょう。
| 同僚のタイプ | やりがちなNG対応 | おすすめの対応 |
|---|---|---|
| 話しかけすぎる同僚 | イライラしてぶっきらぼうな返事をする/完全に無視する | 「今は集中タイム」と伝え、話せる時間帯を具体的に共有する |
| 音や動きが多い同僚 | 周囲に不満を漏らすだけで、本人には一切伝えない | 事実ベースで「この音で集中が切れてしまう」と穏やかに相談する |
| 愚痴やネガティブ発言が多い同僚 | 全ての話を最後まで聞き続け、心身ともに消耗する | 時間を区切って聞き、途中で話題を変える・席を離れる選択肢ももつ |
この表は、「同僚を変えること」だけにフォーカスするのではなく、自分の振る舞いをどこまで変えられるかを整理するためのものです。まずは、自分が取りがちなNG対応に気づき、少しずつ言い換えや行動の切り替えを試してみてください。
今日からできる気が散る同僚への具体的な対策
自分の「集中タイム」を決めて見える化する
最初の一歩としておすすめなのが、「この時間は集中したい」という時間帯をあらかじめ決めて見える化することです。例えば、午前中の9時〜11時は資料作成に集中したいと決めたら、その時間帯はチャットのステータスを「集中モード」にする、卓上に小さな「集中しています」のサインを置くなど、周囲にも分かる形で表現します。
これにより、「いつ話しかけてよいのか」が同僚側にも伝わりやすくなり、不要な中断を減らせます。また、自分自身にとっても「今は集中モードだ」と脳にスイッチを入れるきっかけになります。
仕事の内容を「中断に強いタスク」と「中断に弱いタスク」に分ける
気が散る同僚が近くにいることが分かっている場合、その状況を前提にタスクの組み合わせ方を変えるのも有効です。具体的には、仕事を「中断に弱いタスク」と「中断に強いタスク」に分け、同僚から話しかけられやすい時間帯には、あえて中断に強いタスクを配置します。
例えば、考える時間が多い企画・設計・文章作成などは中断に弱いタスクに当たります。一方で、メールの整理、簡単な入力作業、チェックリストに沿った確認などは、中断されても比較的再開しやすいタスクです。自分の1日の流れを振り返りながら、それぞれのタスクを分類してみると、自分なりの「集中を守る時間割」が見えてきます。
「席を離れる」という選択を積極的に使う
同僚の雑談や大きな話し声が止まらないとき、最もシンプルで効果的なのが「物理的な距離を取る」ことです。会議室や空きスペース、社内カフェ、場合によっては在宅勤務など、選べる選択肢があるなら、その中から「集中モード用の場所」を1〜2カ所用意しておきます。
ポイントは、「気が散ってから慌てて避難する」のではなく、「この時間帯に集中したいタスクをするなら最初から静かな場所を選ぶ」と前もって決めておくことです。これにより、同僚へのネガティブな感情をため込まずに、自分から集中環境をつくれるようになります。
角が立たない伝え方と、頼り方のコツ
「あなたが悪い」ではなく「自分はこう感じる」という伝え方をする
気が散る同僚に直接何かを伝えるとき、いきなり「うるさい」「迷惑だ」とストレートに言ってしまうと、相手との関係が悪化しやすくなります。そこで意識したいのが、「あなたメッセージ」ではなく「私メッセージ」で伝えるということです。
例えば、「あなたの話し声がうるさいです」と伝える代わりに、「考えごとをしているときに声が聞こえると、どうしても集中が途切れてしまって…。9〜11時だけ少し静かにしてもらえると本当に助かります」といった形で、自分の感じ方と具体的な要望をセットで伝えます。
NGフレーズと、言い換えフレーズの例
ここで、つい言ってしまいがちなNGフレーズと、角が立ちにくい言い換えフレーズを整理しておきます。実際に伝えるときは、そのまま読むのではなく、自分の言葉に少し変えて使ってみてください。
| NGフレーズ | 言い換えフレーズの例 |
|---|---|
| 「ちょっとうるさいんですけど」 | 「今この資料に集中したくて、少し静かな環境だとすごく助かります」 |
| 「仕事中に雑談しないでもらえますか」 | 「9〜11時だけは集中したい時間にしていて、雑談はお昼か夕方にできると嬉しいです」 |
| 「愚痴ばかり聞かされるとしんどいです」 | 「最近ちょっとキャパオーバー気味で、ネガティブな話を長く聞いている余裕がなくて…。ごめんね、今日はここまででいいかな」 |
この表のポイントは、相手を責める言葉を避けつつ、「自分の状態」と「具体的にどうしてもらえると助かるか」をセットで伝えることです。曖昧に「静かにしてほしい」と伝えるよりも、時間帯や状況を具体的に示すことで、相手も行動に移しやすくなります。
上司や人事に相談するときの整理の仕方
直接伝えても状況が改善しない、あるいは自分一人では伝えにくい場合は、上司や人事・総務に相談する選択肢も検討しましょう。その際は、「誰それさんがうるさい」という人物批判ではなく、「仕事への影響」を中心に事実を整理することが大切です。
例えば、「集中が必要な業務中に、1時間で5回以上話しかけられてしまい、資料作成に2倍以上時間がかかっている」「チャットで夜遅くまで返信を求められており、睡眠不足になっている」といったように、具体的な頻度や影響を書き出しておくと、上司側も対応方針を検討しやすくなります。
組織・環境レベルでできる「気が散りにくい」仕組みづくり
チーム全体で「集中タイム」の共通ルールを決める
個人の努力だけでは限界があるため、可能であればチーム全体で「集中タイム」の共通ルールを決めることも検討しましょう。例えば、「午前中の10〜11時は原則としてチャットの通知を控える」「その時間は雑談や軽い相談を避ける」といったシンプルなルールでも、集中度合いは大きく変わります。
こうしたルールは、一人の悩みをきっかけにしつつも、チーム全員の生産性を上げる取り組みとして提案するのがおすすめです。「自分だけが得をする仕組み」ではなく、「みんなの集中力を守る仕組み」として語ると、受け入れられやすくなります。
チャット・メール・対面の使い分けを明文化する
オンラインでの「気が散る同僚」の多くは、チャットやメールの使い方があいまいなことから生まれます。そこで、「緊急度ごとにどのツールを使うか」「どの程度の速度で返信すべきか」をチームで共有しておくと、余計な中断を減らせます。
例えば、「緊急度が高いときは電話や口頭、それ以外はチャット」「チャットの既読は即返信を意味しない」「メールは半日〜1日以内の返信でOK」など、目安を決めておくだけでも、通知に振り回されるストレスは軽くなります。
席配置やゾーニングで物理的な集中エリアをつくる
オフィスレイアウトの変更が可能であれば、「集中エリア」と「コミュニケーションエリア」を分けるゾーニングも有効です。集中エリアでは通話や雑談を控える代わりに、コミュニケーションエリアでは自由に会話してよい、というようにルールを分けると、両方のニーズを満たせます。
大がかりなレイアウト変更が難しい場合も、「この島は比較的静かな作業用」「このスペースは打ち合わせ・雑談用」といった役割分担を決めるだけでも、気が散る要因は減らせます。小さな工夫の積み重ねが、結果として大きな違いを生みます。
専門機関への相談を検討したい目安と、自分を守る考え方
「ただの集中の問題」を超えて、心身に影響が出ているとき
気が散る同僚の存在が、単に「少しイライラする」程度なら、この記事で紹介した対策でかなり軽減できることが多いです。しかし、次のような状態が続いている場合は、職場の産業医やメンタルヘルス窓口、外部の専門機関に相談することも視野に入れてください。
例えば、同僚の言動を考えると夜眠れない、仕事に行く前から強い不安や吐き気を感じる、ミスが増えて自己評価が極端に下がっている、といった状況です。このような状態は、単なる集中力の問題ではなく、心や体の負担が大きくなっているサインの可能性があります。
「自分が弱いから」ではなく「環境との相性が悪いだけ」と捉える
真面目な人ほど、「同僚のことで悩む自分が弱い」「こんなことで相談するなんて」と、自分を責めてしまいがちです。しかし、どれくらいの刺激で疲れてしまうかは、人によって大きく異なります。音や人間関係に敏感なのは、決して欠点ではありません。
「自分が弱いから」ではなく、「今の環境と自分の特性の相性が良くないだけ」と捉え、そのうえでどう環境を調整するか、どこまで自分で工夫し、どこから先は周囲に頼るかを考えていくことが大切です。必要であれば、カウンセラーや専門家の力を借りることも、立派なセルフケアの一つです。
相談先の例と、相談するときに伝えたいポイント
相談先としては、会社に産業医やメンタルヘルス窓口があればそこを、なければ自治体の相談窓口や、外部のカウンセリングサービスなどがあります。相談の際は、「誰がどうしたか」よりも、「自分の心身にどのような影響が出ているか」「仕事のパフォーマンスにどのような支障が出ているか」を中心に伝えると、適切なアドバイスが受けやすくなります。
よくある質問(Q&A)
Q. 気が散る同僚が上司の場合は、どう対処すればいいですか?
A. 上司が頻繁に話しかけてきたり、雑談が多かったりする場合でも、基本的な考え方は同じです。「自分の仕事への影響」を軸に、「この時間帯だけは集中したい」「事前にチャットで確認してから声をかけてもらえると助かる」といった形で、具体的な要望として伝えるのがポイントです。直属の上司に直接言いにくいときは、信頼できる別の上司や人事に相談し、第三者を介して調整してもらう方法もあります。
Q. 同僚との仲が良いからこそ、注意しづらいです。
A. 仲が良いからこそ、相手を傷つけたくないという気持ちは自然なことです。その場合は、「あなたのことが嫌いだから言うのではない」という前置きを入れたうえで、「〇〇さんと話すのは楽しいけれど、この時間帯だけは集中したくて…」と、関係のプラス面を認めながら要望を伝えると受け入れられやすくなります。むしろ、関係性が良いからこそ、正直に気持ちを伝え合えるという捉え方もできます。
Q. 同僚の愚痴を聞かないと、冷たい人だと思われそうで不安です。
A. すべての愚痴を無制限に聞き続ける必要はありません。あなたの心身がすり減ってしまっては、本来の仕事にも支障が出てしまいます。「今日は時間に余裕があるので少しなら聞ける」「今は締め切り前で余裕がないので、また今度聞かせて」といったように、自分の状態によって対応を変えることはごく自然なセルフケアです。相手との関係性を大切にしつつ、自分を守るラインも同時に意識しましょう。
Q. 席替えをお願いするのは、やりすぎでしょうか?
A. 状況によっては、席替えは現実的で効果的な解決策になり得ます。ただし、「あの人のせいで」という伝え方ではなく、「集中が必要な業務が増えたので、静かなエリアに移動したい」といったように、自分の業務上の理由を中心に相談するのがおすすめです。席替えが難しい場合でも、時間帯限定で別スペースを使わせてもらうなど、代替案を一緒に検討してもらえることがあります。
用語解説
集中タイム
自分が「この時間は中断なく仕事に集中したい」とあらかじめ決めた時間帯のことです。あらかじめ周囲と共有しておくことで、話しかけられる頻度を減らし、集中力を守りやすくします。
ゾーニング
オフィス空間を「集中するエリア」「コミュニケーションするエリア」など、役割ごとに区切る考え方です。物理的なレイアウトの工夫によって、気が散る要因を減らす狙いがあります。
私メッセージ
「あなたが〜したからダメ」という伝え方ではなく、「私は〜と感じる」「私は〜してもらえると助かる」という、自分の感情やニーズを主語にした伝え方です。相手を責めずに要望を伝えやすくなります。
中断に強いタスク・中断に弱いタスク
中断されてもすぐに再開しやすい仕事を「中断に強いタスク」、再開に時間がかかる仕事を「中断に弱いタスク」と呼んで整理したものです。タスクをこの観点で分類することで、気が散りやすい時間帯の仕事配分を工夫しやすくなります。
まとめ|全部を完璧にやらなくていい。まずは一つだけ実験してみる
気が散る同僚の存在は、決して珍しいものではありません。オープンオフィスやオンラインツールの普及によって、他人の行動や発言がこれまで以上に自分の集中に入り込みやすい時代になっています。その中で、すべてを我慢し続けるのは現実的ではありません。
記事の前半では、話しかけすぎる同僚、音や動きが多い同僚、愚痴やネガティブ発言が多い同僚など、タイプ別に原因や特徴を整理しました。中盤では、集中タイムの見える化やタスクの組み合わせ方、席を離れるという選択肢、角が立たない伝え方や言い換えフレーズなど、今日から実践できる具体的な工夫を紹介しました。後半では、チームや組織としての仕組みづくり、そして心身への影響が大きくなったときには専門機関への相談も視野に入れることの大切さをお伝えしました。
大事なのは、これらを一度に完璧に実行しようとしないことです。むしろ、「明日からできそうなことを一つだけ」選び、実験してみるつもりで取り組んでみてください。例えば、「午前中の1時間だけ集中タイムのサインを出してみる」「一つだけ言い換えフレーズを使ってみる」「週に一度、静かな場所で仕事をしてみる」など、小さな一歩でかまいません。
その一歩が、あなたの集中力と心の余裕を少しずつ取り戻し、「気が散る同僚に振り回されない働き方」へのスタートになります。あなたが自分の時間とエネルギーを大切にしながら、気持ちよく仕事に向き合えるようになることを願っています。

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