夜、布団に入ってから頭の中がフル回転してしまい、なかなか寝つけない。そんな「寝る直前の考え事」に悩んでいる人はとても多いです。仕事のこと、将来の心配、人間関係でのモヤモヤ、過去の失敗の反省など、昼間はそこまで気にならないのに、静かな夜になると一気に押し寄せてくることがあります。
このような状態が続くと、「寝る直前=考え事の時間」と脳が覚えてしまい、ベッドに入るたびに自動的に不安モードが立ち上がる悪循環に陥りやすくなります。その結果、寝つきが悪くなり、睡眠の質が落ち、翌日の集中力や気分にも影響が出てしまいます。
そこで本記事では、「寝る直前の考え事を減らす方法」をテーマに、原因の整理から、今日から取り入れられる具体的な行動、環境づくり、マインドセットまで、丁寧に解説していきます。
まず最初に、この記事全体の結論をまとめると、次の3つのポイントに集約されます。
結論の要約(重要ポイント)
① 寝る直前に頭が冴えるのは「性格の問題」ではなく、脳の仕組みと一日の過ごし方が大きく関係している。
② 「考え事をしないようにする」よりも、「考え事をあらかじめ出し切る時間」と「寝る前の決まったルーティン」を作る方が現実的で続けやすい。
③ 完璧にゼロを目指すのではなく、「考え事が浮かんでも、深追いせず流せる状態」を目指すと、心も睡眠も安定しやすくなる。
この記事は、日々の睡眠・集中・行動習慣の改善について継続的に情報発信しているライターが、心理学や行動科学などの一般的な知見を参考にしながら、実生活で試しやすい形に整理して解説しています。ここで紹介する内容は、あくまで一般的な情報提供であり、医療行為や専門的な診断・治療を代替するものではありません。強い不眠やメンタル面の不調が続く場合は、必ず医師や専門機関への相談を検討してください。
寝る直前の考え事が増える原因を理解する
寝る直前の考え事を減らすためには、単に「考えるのをやめよう」と努力するより先に、なぜそのタイミングで考え事が増えるのかという原因のパターンを理解しておくことが大切です。この理解があるだけで、自分を責める感覚が和らぎ、対策も立てやすくなります。
静かな夜は「思考が増幅されやすい」時間帯である
日中は、仕事・家事・スマホ・人との会話など、外から入ってくる刺激が絶え間なく押し寄せています。そのため、多少の不安や悩みがあっても、意識が分散されやすい状態です。ところが、寝る直前になると、部屋は暗くなり、会話も減り、スマホも置いて、外からの刺激が一気に少なくなります。
この「外の刺激が減ったタイミング」で、今度は内側からの刺激=自分の考えや感情が目立ち始めます。日中は脇に追いやっていた心配ごとや、小さな不安の断片が、静かな環境の中で一気に浮かび上がってくるのです。決してあなたが「ネガティブだから」ではなく、環境的にそうなりやすい時間帯なのだと理解しておくと、自分を責めずにすみます。
一日の「余韻」が頭の中で再生される
寝る直前は、その日一日で起きた出来事の振り返りの時間になりやすいという特徴もあります。仕事での会話のワンシーン、ちょっとしたミス、相手の表情、送ったメールの文面などが、まるでビデオを巻き戻すように何度も再生されることがあります。
これは、脳が「情報の整理」をしている自然な動きでもあります。しかし、もともと真面目で責任感が強い人ほど、「あのときもっとこうすべきだった」「失礼だったかもしれない」といった自己批判的な視点が強まり、振り返りが責めモードの反省会に変わってしまうことがあります。このパターンが続くと、寝る直前の時間がつらく感じられ、ベッドに入ること自体が憂うつになってしまいます。
ベッドの中が「考え事をする場所」として条件づけされている
もう一つの大きな原因が、「条件づけ」です。毎晩のように、ベッドに入ってから長時間考え事をしていると、脳は次第に「ベッド=考え込む場所」と学習してしまうことがあります。すると、たとえその日に特別な問題がなくても、布団に入るだけで自動的に思考スイッチがオンになり、考え事が始まってしまうのです。
これは、ある意味「習慣」と同じ構造です。歯磨きをすれば眠るモードに入るように、ベッドに入れば考え事モードに入るというパターンが固定されている場合、環境と行動の組み合わせ自体を少しずつ塗り替えていく必要があります。
不安を「先送り」してしまう積み重ね
日中に感じたモヤモヤや不安を、忙しさを理由に「あとで考えよう」と心の片隅に押しやっていると、その「あとで」が夜にまとめてやってきます。解決していない小さな気がかりがいくつも溜まると、寝る直前になってから一気にあふれ出るような感覚になるのです。
この状態では、頭の中に「やり残しの付箋」が大量に貼られているようなものです。結果として、ベッドに入ってからも、「あれも気になる」「これもちゃんと考えておかなきゃ」と思考が止まりにくくなります。
寝る直前の考え事を減らすための具体的な行動習慣
原因が分かったところで、ここからは「寝る直前の考え事を減らす方法」を、具体的な行動レベルに落とし込んで紹介していきます。すべてを一度に実践する必要はなく、自分に負担の少ないところから一つずつ試していくことが大切です。
寝る90分前から「考え事を減らす準備」を始める
寝る直前だけを変えようとするよりも、寝る90分前くらいからの過ごし方を少しずつ整える方が、結果的に考え事も減りやすくなります。例えば、寝る時間を23時と決めるなら、21時30分ごろから「夜モード」に切り替えるイメージです。
この時間帯には、刺激の強い動画や情報を大量に浴びるのではなく、ゆっくりした家事や軽いストレッチ、ぬるめのお風呂、明るすぎない照明など、心身が穏やかになる行動を選びます。こうすることで、脳が「戦闘モード」から「休息モード」に移行しやすくなり、寝る直前に考え事が加速するのを防ぎやすくなります。
「思考のメモ出し」で頭の中の荷物を下ろす
寝る前の考え事を減らすために、多くの人にとって取り入れやすいのが「メモ出し」です。これは、頭の中に浮かんでいる心配ごと、明日のタスク、気になっていることなどを、数分でいいので紙やノートに書き出してしまう方法です。
ポイントは、きれいに整理して書く必要はなく、「とにかく頭の中にあるものを外に出す」ことを優先することです。書き出したメモは、翌日以降に落ち着いて見直せばよく、寝る直前には「今日のところはここまで」と区切りをつけるきっかけにもなります。
また、「心配ごと」「やること」「後で考えたいテーマ」など、ざっくりカテゴリーごとに分けて書いてもかまいません。大事なのは、頭の中という曖昧な場所に置いておかず、視覚的に「ここに置いた」と確認できる状態にすることです。
ベッドに入る前に「今日の反省会」を終わらせておく
寝る直前の反省会が長くなりがちな人は、あえてベッドに入る前に「ミニ振り返りタイム」を済ませておくのも一つの方法です。例えば、寝る30分前に、テーブルでノートを開き、「今日うまくいったこと」「気になっていること」「明日試したいこと」をそれぞれ数行書いてみます。
このとき、反省や後悔だけに偏らないように、「よかった点」もセットで書き出すことが大切です。「今日はここまで考えたから、寝るときはもうこれ以上続けなくていい」と自分に合図を出すことで、ベッドの中を反省会会場にしなくてすみます。
「寝る直前専用の思考」を決めておく
考え事を完全にゼロにしようとすると、かえって「考えないようにしなきゃ」と意識がそちらに向かい、逆に頭が騒がしくなってしまうことがあります。その代わりに、寝る直前に考えるテーマをあらかじめ決めておくという方法があります。
例えば、「今日ありがたかったことを3つ思い出す」「明日の朝に楽しみにしていることを一つイメージする」「好きな場所の景色を思い出す」など、心が少し温かくなるようなテーマを選びます。寝る直前に考える内容を、意識的に「穏やかな方向」に誘導するイメージです。
こうした「寝る前の思考テーマ」を繰り返すことで、次第にベッドの中が「安心感や感謝を感じる時間」として上書きされ、考え事の質も穏やかなものへと変わりやすくなります。
寝る直前の考え事を減らすための環境づくり
行動習慣と同じくらい重要なのが、「環境の整え方」です。寝る直前の考え事を減らす方法を定着させるには、脳にとって「ここは休む場所」と分かりやすいサインを増やしていくことが効果的です。
ベッド周りから「考え事のきっかけ」を減らす
まず見直したいのが、ベッド周りの環境です。寝る直前の考え事を増やしやすいのは、例えば次のようなものです。
仕事用のパソコンや資料、未処理の書類の束、通知が頻繁に来るスマホ、大量の未読メール、翌日のタスクを連想させる荷物などです。これらが視界に入るだけで、脳は「まだ終わっていないことがある」と判断し、考え事のスイッチが入りやすくなります。
理想を言えば、ベッドの近くには仕事やタスクを連想させるものを置かず、「睡眠」と「リラックス」に関係するものだけを置く状態を目指します。現実的に難しい場合でも、見えない場所に移動したり、カゴやボックスにまとめて目隠しするだけでも、頭の落ち着き方は変わってきます。
スマホとの距離を少しだけ離す
寝る直前までスマホを見ていると、情報量の多さや画面の明るさによって、脳が覚醒モードのままになりがちです。さらに、SNSやメール、ニュースなどを見て新たな不安材料が増えてしまうと、考え事のネタを自分から増やしてしまうことにもつながります。
いきなり「寝る1時間前から完全にスマホ禁止」にするとハードルが高い場合は、まずは寝る15~30分前だけでも枕元から離すことを目標にしてみてください。充電器の位置をベッドから少し離したり、寝る前は機内モードにして通知を切るだけでも、思考の静かさは変わります。
照明・音・温度で「休息モード」を演出する
寝る直前の考え事を減らすには、環境からのサインで脳に「もう頑張らなくていい時間だよ」と伝えることも大切です。照明は、昼間のような白く明るい光よりも、少し暗めであたたかみのある色にすると、気持ちも落ち着きやすくなります。
また、完全な無音がかえって不安を増やしてしまう場合は、小さな音量で環境音や穏やかな音楽を流すのも一つの方法です。雨音や川のせせらぎ、波の音など、一定のリズムのある音は、考え事から注意をそらす助けになります。
室温や寝具の肌触りも、心の落ち着きと密接に関係します。暑すぎたり寒すぎたりすると、それだけでイライラや不快感が増し、考え事もネガティブな方向に傾きやすくなります。自分にとって「ちょうどいい」と感じられる温度や布団の重さを知っておくことも、立派なセルフケアです。
環境を整えるときのNG行動と代替案
ここで、寝る直前の考え事を減らすための環境づくりにおいて、やってしまいがちなNG行動と、その代わりに取り入れたい行動を整理しておきます。
以下の表は、「ついやってしまう行動」と「それを少しだけ良い方向に置き換える案」を並べたものです。この表を参考に、自分のパターンに近いものを一つ選んで、今夜から試してみてください。
| ついやってしまう行動 | なぜ考え事が増えやすいか | 今日から試せる代替行動 |
|---|---|---|
| ベッドで仕事メールをチェックする | 未処理のタスクや返事待ちが頭に残り、眠る直前に仕事モードが再起動してしまう | メール確認は寝る30分前までと決め、ベッドでは開かないルールにする |
| 寂しさからSNSを長時間スクロールする | 他人と自分を比較しやすくなり、不安や自己否定の材料が増える | SNSは時間を決めて見て、その後は本や音声コンテンツに切り替える |
| ベッド周りに仕事道具を積み上げて置く | 視界に入るたびに「やり残し」を思い出し、反省や焦りが生まれる | 仕事用のものは一か所の箱に入れ、寝る前にふたを閉めて見えないようにする |
表のポイントは、「完璧な正解」を探すのではなく、今の行動を少しだけマイルドな方向にずらすことです。一度に全部を変えようとすると続きませんが、まずは一つ変えられれば上出来です。
寝る直前の考え事を減らすマインドセット
行動や環境を変えるだけでなく、物事の捉え方、つまりマインドセットを調整することも、寝る直前の考え事を減らすうえで重要です。ここでは、特に意識しておきたい考え方を紹介します。
「考え事をゼロにする」目標から降りる
多くの人がつまずきやすいのは、「寝る直前に一切考え事をしない状態」を目標にしてしまうことです。しかし、人間の脳は、完全な空白を長く保つことがそもそも得意ではありません。何かしらの思考が浮かぶのは、とても自然なことです。
そこで目指したいのは、「考え事が浮かんでも、深追いしすぎずに流せる状態」です。思考が浮かんだときに、「また考えちゃった、ダメだ」と自己否定するのではなく、「あ、今こういうこと考えているな」と一歩引いた位置から眺めるイメージを持つと、心の負担がぐっと軽くなります。
「今夜中に答えを出さなくていい」と自分に許可を出す
寝る直前の考え事が止まらない背景には、「早く答えを出さなければ」「結論をつけないと落ち着かない」といった焦りが隠れていることがあります。しかし、夜の脳は一日の疲れがたまっており、冷静な判断には向いていません。この状態で結論を急ごうとすると、極端でネガティブな方向に偏りやすくなります。
そこで、心の中で「このテーマの答えは、明日の昼間の自分に預けよう」と意識してみてください。メモ帳に一行「この件は明日の〇時以降に考える」と書いてしまうのも有効です。こうして、「今夜中に解決しなくていい」と自分に許可を出すことで、脳は「今やるべき仕事」が減ったと認識し、休息モードに入りやすくなります。
ネガティブな思考に「名前」をつけて距離を取る
考え事がぐるぐる回り始めたときは、その思考に名前をつけてみるのも一つの方法です。例えば、「最悪の未来を想像するモード」「自己反省モード」「他人比較モード」など、自分なりのラベルで構いません。
「今、自分は他人比較モードに入っているな」と気づけると、「これはあくまで『モード』であって、自分の本質そのものではない」と距離を取れるようになります。距離が取れると、思考の渦に完全に飲み込まれることが減り、「今は寝る時間だから、このモードはいったん中断しよう」と切り替えやすくなります。
自分を責める言葉ではなく、労う言葉をかける
寝る直前は、一日の終わりを締めくくるタイミングです。本来なら、「今日も一日よく頑張った」と自分を労う時間にできると、心は穏やかになります。しかし、完璧主義の人ほど、「あれが足りなかった」「もっとできたはずだ」と、責める言葉で一日を終わらせてしまいがちです。
そこで、眠る前に意識的に、「今日の自分の良かったところを一つだけ見つける」習慣をつくってみてください。大きな成果でなくて構いません。「あの場面でありがとうと言えた」「忙しい中でご飯を用意した」など、ささやかなことで大丈夫です。自分を責め続ける夜から、自分を少しだけ認めて締めくくる夜に変えていくことで、考え事の質もやわらいでいきます。
寝る直前の考え事を減らすためのルーティン設計
ここまで紹介してきた行動・環境・マインドセットを、「毎晩のミニルーティン」としてまとめると、習慣として定着しやすくなります。ここでは一例として、寝る前90分の流れをイメージしやすい形で整理してみます。
寝る90分前〜60分前:情報のシャットダウンと軽い家事
この時間帯は、スマホやパソコンを使う時間を少しずつ減らし、頭をゆっくりモードに切り替えていくことを意識します。例えば、洗い物や片づけなどの軽い家事をしながら、その日の出来事を穏やかに振り返るのも良いでしょう。
ニュースやSNSなど、感情を揺さぶる情報は、この時間帯からできるだけ距離を取ると、寝る直前の考え事の種を減らすことにつながります。完全にゼロにする必要はありませんが、「ここからは心を落ち着ける時間」という区切りをつけるイメージです。
寝る60分前〜30分前:メモ出しと小さな振り返り
この時間は、「頭の中の荷物を下ろす時間」として使います。紙のノートやメモアプリに、心配ごとや明日のタスク、後で考えたいことを書き出します。「完璧に整理する」のではなく、思いついた順にどんどん出していく感覚で構いません。
メモを書き終えたら、今日の自分を簡単に振り返ります。「良かったこと」「頑張ったこと」「次に試したいこと」をそれぞれ一つずつ書いてみると、寝る直前に反省モードだけが暴走するのを防ぎやすくなります。
寝る30分前〜就寝:入眠儀式と穏やかな思考タイム
寝る30分前になったら、より強く「寝る前の時間」としてのスイッチを入れます。照明を落とし、できればスマホは遠ざけ、軽いストレッチや深呼吸、白湯を飲むなど、自分なりの入眠儀式を決めておきます。
ベッドに入ってからは、あらかじめ決めておいた「寝る直前専用の思考テーマ」に意識を向けます。例えば、「今日ありがたかったこと」「明日の朝の小さな楽しみ」「好きな景色や思い出」などです。もし途中で不安な考えが浮かんでも、「今は寝る時間だから、このテーマは明日考えよう」と心の中でそっと言い換え、穏やかなテーマへと戻していきます。
ルーティン設計の例を比較する
以下の表では、「寝る直前までバラバラに過ごしてしまうパターン」と、「寝る前90分を大まかなブロックで区切ったパターン」を比較しています。自分の生活リズムに近い方と見比べながら、「どの時間帯なら変えやすそうか」を探してみてください。
| 時間帯 | 考え事が増えやすい過ごし方 | 考え事が減りやすい過ごし方の例 |
|---|---|---|
| 寝る90〜60分前 | 強い刺激のある動画やゲームを続ける | 軽い家事やストレッチで体をほどきながら一日を振り返る |
| 寝る60〜30分前 | SNSやメールを見続け、気分が上下する | ノートに不安やタスクを書き出し、今日の良かったことも一つ書く |
| 寝る30分前〜就寝 | ベッドでスマホを操作し続ける | 照明を落とし、入眠儀式と穏やかな思考テーマで夜を締めくくる |
この表はあくまで一例です。すべてを真似する必要はなく、「この時間帯なら5分だけでも変えられそう」というところから、小さく試してみてください。
専門機関への相談を検討したい目安
ここまでお伝えしてきた「寝る直前の考え事を減らす方法」は、あくまで一般的なセルフケアの範囲に収まるものです。しかし、状況によっては、自分だけで抱え込まず、医師や専門機関に相談した方がよいケースもあります。このセクションでは、その目安となるポイントを整理しておきます。
日常生活に大きな支障が出ている場合
寝る直前の考え事が続いた結果として、明らかに日常生活のパフォーマンスが落ちている場合は、専門家への相談を検討するサインと考えられます。例えば、ほとんど眠れない日が続き、仕事や学業に集中できない、ミスが急に増えた、人との会話がおっくうで避けるようになった、といった状態が挙げられます。
こうした変化が数週間以上続いている場合は、「自分の頑張りが足りない」のではなく、心や体が助けを必要としているサインかもしれません。早めに相談することで、負担がより軽いうちに対処できる可能性が高まります。
気分の落ち込みや不安が強く、長く続いている場合
寝る直前の考え事だけでなく、一日を通して気分の落ち込みや不安が強く続いていると感じる場合も、専門的なサポートを受けることを検討してよいタイミングです。例えば、「何をしても楽しく感じられない」「朝起きるのがつらい」「理由もなく胸がざわざわして落ち着かない」といった状態が、ほぼ毎日のように続く場合です。
こうした状態は、自分の気合いや根性だけで解決しようとすると、かえって消耗してしまうことがあります。信頼できる医療機関やカウンセリングサービスに相談し、今の状態に合ったサポートを受けることは、弱さではなく、むしろ大きな一歩です。
自分自身を傷つけてしまいそうなほどつらいとき
もしも、「消えてしまいたい」「自分なんていない方がいい」といった考えが頻繁に浮かぶ、あるいは自分を傷つけてしまいそうな衝動がある場合は、今すぐ専門機関や緊急の相談窓口に連絡することがとても大切です。
この記事でお伝えしているセルフケアは、心の土台がある程度保たれている状態でこそ役に立つ方法です。心が限界まで追い込まれているときは、一人で対策を考えること自体がさらに負担になることもあります。「つらさを誰かと共有する」「安全を確保する」ことを最優先に考えてください。
相談先を選ぶときの考え方
具体的な医療機関名をここで挙げることはできませんが、相談先を選ぶ際の考え方として、次のようなポイントを意識してみてください。
自分が通いやすい場所かどうか、話をじっくり聞いてくれそうかどうか、必要に応じて家族や職場への説明もサポートしてくれるかどうかなどです。不安な場合は、最初から完璧な相談先を探そうとせず、「まずは一度話を聞いてもらう場所」として気軽に利用してみるのもよいでしょう。
よくある質問(Q&A)
寝る直前の考え事は、完全になくさないといけませんか?
いいえ、完全になくす必要はありません。人間の脳は常に何かを考えているため、「一切考えない状態」を目指すこと自体が、かえってストレスになることがあります。大切なのは、考え事が浮かんだときに、それを深追いしすぎず、「今は寝る時間だから、続きは明日考えよう」と切り替えられることです。
寝る前のメモ出しをしても、余計に不安が強くなる気がします
メモ出しがかえって不安を強めてしまう場合は、「不安の詳細を書き込む」のではなく、「テーマだけを書いておく」方法を試してみてください。例えば、「上司への報告のこと」「家計の見直し」など、見出しだけ書いて、「詳細は明日の〇時に考える」と一行添えておきます。こうすることで、「今はここまででいい」という区切りがつけやすくなります。
スマホを寝室から完全に持ち出すのは難しいです
現代の生活では、スマホを完全に寝室からなくすのは現実的でない場合が多いです。その場合は、距離や使い方を工夫するだけでも効果があります。例えば、ベッドから手を伸ばさないと届かない位置に置く、寝る30分前からは機内モードにする、寝る前はSNSではなく音楽アプリだけに限定するなど、小さなルールを決めてみてください。
環境音や音楽を流すと、逆に気になってしまいます
音に敏感なタイプの人は、音楽や環境音が逆に気になって眠りを妨げてしまうこともあります。その場合は、無理に音を取り入れる必要はありません。代わりに、耳栓を使って生活音を減らしたり、呼吸に注意を向けることで、頭の中の雑念を鎮める方法もあります。自分が「落ち着く」と感じる方法を優先して選んでください。
どれくらい続ければ効果が出てくるのでしょうか?
個人差はありますが、多くの場合、寝る前のルーティンや環境の整え方を数週間から1〜2か月程度続けることで、少しずつ変化を感じる人が多いと言われます。最初の数日はあまり変わらないように感じても、あきらめずに「小さな変化」を積み重ねることが大切です。
用語解説
条件づけ
ある状況や場所と、特定の感情や行動が結びつき、同じ状況になると自動的にその反応が起きるようになる現象を指します。寝る直前にいつも考え事をしていると、「ベッドに入る=考え事モード」という条件づけが起きることがあります。
入眠儀式
眠る前に毎晩行う「決まった行動」のことです。例えば、ストレッチをする、白湯を飲む、日記を書くなど、同じ行動を繰り返すことで、脳が「そろそろ眠る時間だ」と認識しやすくなります。
メモ出し
頭の中にある考え事や不安、タスクなどを、紙やデジタルメモに書き出すことです。情報を頭の外に出すことで、思考の渋滞を減らし、今やるべきことに集中しやすくする効果が期待できます。
マインドセット
物事をどう捉えるかという考え方の癖や、心構えのことです。寝る直前の考え事に対して、「ゼロにしなければ」「こんなことを考える自分はダメだ」と捉えるか、「浮かんでもいい、深追いしなければいい」と捉えるかで、心の負担は大きく変わります。
セルフケア
自分自身の心や体の健康のために、自分でできるケアのことです。睡眠習慣を整えたり、ストレスを溜め込まないように工夫したりすることも、セルフケアの一つです。
まとめ|全部を完璧にやらなくていい。まずは一つだけ選んでみる
最後に、この記事全体のポイントを整理しておきます。寝る直前の考え事が増えてしまうのは、性格の弱さや意志の弱さのせいではなく、脳の仕組みと一日の過ごし方、環境の影響が重なった結果です。静かな夜は考えやすい時間帯であり、ベッドに入る習慣そのものが「考え事モード」と結びついていることもあります。
一方で、その流れを少しずつ穏やかな方向に変えていく方法もたくさんあります。寝る90分前から刺激を減らしていくこと、メモ出しで頭の中の荷物を外に出すこと、寝る前に小さな振り返りと感謝をしてみること、ベッド周りから仕事の気配を減らすこと、自分を責める言葉ではなく、労う言葉で一日を締めくくることなどです。
ここで大切なのは、全部を一気に完璧にやろうとしないことです。一度に多くを変えようとすると、結局苦しくなって続きません。まずはこの記事の中から、「これならできそう」と感じたものを一つだけ選んで、今夜から試してみてください。
例えば、「寝る30分前からスマホを遠ざける」「寝る前にノートに3行だけメモを書く」「ベッドに入ったら今日の良かったことを一つ思い出す」など、どんなに小さな一歩でも構いません。その一歩を続けることで、少しずつ「寝る直前=考え事の時間」から、「寝る直前=心と体を休める時間」へと、夜の意味が変わっていきます。
そしてもし、自分だけではどうにも難しいと感じたときは、一人で抱え込まず、医師や専門機関、信頼できる人に相談することも選択肢に入れてください。あなたが安心して眠れる夜を取り戻すことは、決してわがままではなく、日々を健やかに生きるための大切な土台です。
今日という夜が、少しでも穏やかに、静かに休める時間になりますように。

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