一日の終わりに「さあ寝よう」と布団に入ったのに、頭が冴えてなかなか眠れない。夜中に何度も目が覚めてしまい、朝はだるくて起きられない。「もしかして、寝る前に飲んでいるものが良くないのかな」と感じたことはないでしょうか。
実は、寝る前に何気なく飲んでいるドリンクは、睡眠の質に大きく影響します。同じ睡眠時間でも、「ぐっすり眠れてすっきり起きられる日」と「浅い眠りで疲れが取れない日」の差に、寝る前の飲み物が関わっていることは少なくありません。特に、コーヒーやお酒、甘いジュースなど、日常的に飲みやすい飲み物ほど注意が必要です。
この記事では、寝る前に避けたい飲み物をテーマに、「なぜ良くないのかという原因」「具体的にどんな飲み物に気をつけるべきか」「今日から現実的に変えられる対策」「それでもつらいときに専門機関へ相談したい目安」まで、できるだけわかりやすく、しかし表面的になりすぎないように掘り下げて解説します。
最初に、この記事の結論を三つにまとめておきます。
第一に、寝る前に避けたい飲み物の代表は、カフェイン飲料・アルコール・糖分や刺激の強い清涼飲料であり、これらは「寝つき」と「睡眠の深さ」の両方を乱しやすいということです。
第二に、問題なのは「一杯だけ」よりも、飲む時間帯と習慣化であり、夕方以降に続けて飲むことが、知らないうちに睡眠の質を下げている場合が多いという点です。
第三に、寝る前に避けたい飲み物を完全にゼロにするよりも、「量と時間を見直す」「代わりの飲み物に置き換える」といった現実的な工夫から始めた方が、続けやすく効果も実感しやすいということです。
ここでお伝えする内容は、医療行為や診断・治療を目的としたものではなく、あくまで日常のセルフケアとしての一般的な情報です。強い不眠や体調不良が続く場合は、自己判断に頼らず、医師や専門機関に相談することをおすすめします。
この記事は、睡眠や生活習慣、栄養に関する取材・執筆経験を持つライターが、公的機関の資料や専門家による一般的な解説を参考にしながら、非医療の範囲で整理したものです。医学的な診断や治療を行うものではなく、具体的な症状や持病がある方、妊娠中・授乳中の方、薬を服用している方は、必ず医師や専門家に相談したうえで生活改善を行ってください。
それではまず、「なぜ寝る前の飲み物が睡眠に影響するのか」という原因から見ていきましょう。
寝る前に避けたい飲み物が睡眠に影響する原因を理解する
「寝る前に避けたい飲み物」を具体的に挙げる前に、そもそもなぜ飲み物が睡眠に影響するのか、その背景を知っておくと、単なる我慢ではなく納得感を持って習慣を変えやすくなります。
体内時計とカフェインの関係
人の体には、一日二十四時間のリズムを調整する「体内時計」が備わっています。この体内時計は、光や活動量、体温、ホルモン分泌などと連動しながら、「今は起きる時間」「今は休む時間」といったオン・オフの切り替えを行っています。
カフェインは、このオン・オフの切り替えに強く影響する成分です。カフェインには、眠気を感じさせる物質の働きを一時的に抑える作用があるとされ、日中に飲む分には「シャキッとしたい」「集中したい」という場面で役立ちます。しかし、寝る前の時間帯までカフェインが体内に残っていると、体内時計が「そろそろ休みたい」と出しているサインを打ち消してしまい、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりしやすくなります。
ここで注意したいのは、「夜にコーヒーを一杯飲んだら必ず眠れなくなる」という単純な話ではない、という点です。カフェインに対する感受性には個人差があり、少量でも眠れなくなる人もいれば、ある程度飲んでも平気な人もいます。ただ、寝つきや睡眠の質に悩んでいるなら、まずは夕方以降のカフェイン飲料を見直す価値が高いと言えるでしょう。
アルコールと睡眠の質の落とし穴
「寝る前にお酒を飲むと、すぐ眠れる」という経験がある人は多いと思います。アルコールには、初期段階で不安や緊張を和らげるように感じられる作用があり、その結果、布団に入った直後の寝つきは良くなる場合があります。
しかし、アルコールは数時間たつと体内で分解され、その過程で心拍数が上がったり、発汗が増えたりすることがあります。そのため、眠りの途中で目が覚めやすくなり、朝起きたときに「眠ったはずなのにぐったりしている」と感じる原因につながります。さらに、アルコールには利尿作用もあるため、夜中にトイレに起きる回数が増えやすいという側面もあります。
つまり、寝酒は「寝つきは一時的によくするが、睡眠の質全体は下げてしまう」可能性が高い方法と言えます。特に、寝つきの悪さをお酒でごまかす習慣が続くと、アルコールに頼らないと眠れない感覚が強まり、負のループにはまりやすくなる点にも注意が必要です。
血糖値・胃腸への負担と夜のドリンク
寝る前に砂糖の多いジュースや加糖ミルク飲料、炭酸飲料などを飲むと、血糖値が急に上がり、その後下がる過程で眠りの深さに影響を与えることがあります。血糖値の変動が大きいと、体が「何か対応しなければ」と働き続けてしまい、結果として落ち着いた眠りに入りにくくなると考えられます。
また、脂肪分の多い飲み物や刺激の強い飲み物は、胃腸に負担をかけ、胃もたれや胸やけを引き起こす場合があります。胃腸が活発に働いている状態では、体がしっかりと休息モードに切り替わりづらく、睡眠の質が下がりやすくなります。
このように、寝る前に避けたい飲み物は、体内時計、自律神経、血糖値、胃腸の状態など、睡眠に関わるさまざまな仕組みをじわじわと乱しやすいのです。
代表的な寝る前に避けたい飲み物とその理由を詳しく解説
ここからは、具体的に「寝る前に避けたい飲み物」と、その理由を一つずつ整理していきます。あくまで一般的な傾向であり、個人差はありますが、睡眠の質に悩んでいる場合は優先的に見直したい飲み物たちです。
コーヒー・紅茶・緑茶などのカフェイン飲料
カフェインを含む飲み物として代表的なのが、コーヒーや紅茶、緑茶、エナジードリンクなどです。カフェインは覚醒作用があり、眠気を感じにくくさせます。そのため、夜遅くまで仕事や勉強をするときには頼もしい存在に感じられるかもしれませんが、寝る前の時間帯には逆効果になりやすい成分です。
カフェインの影響がどのくらい続くかは個人差がありますが、摂取後しばらくは体内に残ると考えられています。寝つきの悪さや途中で目が覚めることが気になる人は、少なくとも就寝四〜六時間前からはカフェイン飲料の量を減らす、もしくはノンカフェイン飲料に切り替えることを検討してみましょう。
お酒全般(ビール・ワイン・チューハイなど)
「寝つきを良くするために、寝る前にお酒を一杯」という習慣は、忙しい社会人の間でよく見られます。しかし前述のように、アルコールは寝つきを一時的によくする代わりに、睡眠を浅くし、中途覚醒を増やしやすいという特徴があります。
特に、チューハイやカクテル、甘味の強いお酒は、アルコールだけでなく糖分も多く含んでいる場合があり、血糖値の変動という面からも睡眠の質を乱しやすくなります。睡眠の質を本気で整えたいときには、「寝る前のお酒」を見直すことが、かなり効果の大きい一歩になることが多いです。
甘いジュース・炭酸飲料・エナジードリンク
寝る前に甘い炭酸飲料やフルーツジュース、エナジードリンクなどを飲むと、糖分とカフェインの両方の影響を受ける場合があります。糖分は血糖値の急な上下を招きやすく、エナジードリンクにはカフェインやその他の刺激物が含まれていることが多いため、体が「活動モード」に引き戻されてしまいます。
また、炭酸入り飲料は、胃が膨らんだりゲップが出やすくなったりすることで、寝る前の不快感につながることもあります。喉の渇きを潤したいだけなら、寝る前は炭酸飲料ではなく、常温の水や白湯、ノンカフェインのお茶などを選ぶ方が安心です。
ここで、一度「寝る前に避けたい飲み物」の全体像を整理してみましょう。以下の表は、主なNG飲み物と、その特徴・睡眠への影響をまとめたものです。この表を見ながら、自分の夜の飲み物の習慣と照らし合わせてみてください。
| 寝る前に避けたい飲み物 | 主な成分・特徴 | 睡眠への主な影響 |
|---|---|---|
| コーヒー・エスプレッソ | カフェイン量が多い。苦味が強く、覚醒効果を感じやすい | 寝つきが悪くなる、夜中に目が覚めやすくなる可能性がある |
| 紅茶・緑茶・ウーロン茶など | カフェインを含み、香りでリフレッシュしやすい | 眠気を感じにくくなり、睡眠の深さにも影響する場合がある |
| ビール・ワイン・チューハイ | アルコールを含み、リラックスした感覚を得やすい | 初期は眠くなるが、途中で目が覚めやすくなり、寝起きのだるさにつながることがある |
| 甘い炭酸飲料・清涼飲料水 | 糖分が多く、すっきりした口当たりで飲みやすい | 血糖値の変動や胃腸への負担により、眠りが浅くなる可能性がある |
| エナジードリンク・栄養ドリンク | カフェインや糖分、その他の刺激物を含むことが多い | 体を「活動モード」に切り替えやすく、寝つき・睡眠の質の両方に影響しやすい |
この表は、あくまで「何となく避けた方が良さそう」と感じる飲み物を、具体的に言語化するための地図のようなものです。すべてを一度にやめようとするのではなく、「自分はどれをよく飲んでいるかな」「どこからなら減らせそうかな」と振り返るきっかけとして活用してみてください。
寝る前に避けたい飲み物をやめるための具体的な対策方法
寝る前に避けたい飲み物がわかっても、「仕事柄どうしてもコーヒーを飲んでしまう」「寝酒が習慣になっていてやめるのが不安」ということもあると思います。この章では、現実的に取り組みやすい対策方法を紹介します。
夕方以降のカフェインを減らすステップ
カフェイン飲料をいきなりゼロにするのが難しい場合は、まず時間帯を意識するところから始めるとよいでしょう。たとえば、就寝時間が二十三時ごろであれば、十七時以降はカフェイン飲料を控える、という目安を自分の中で決めてみます。
それ以前の時間帯でも、何杯も繰り返し飲んでいる場合は、「午前中は通常のコーヒー、午後はカフェインレスコーヒーやノンカフェインティーに切り替える」といった工夫も有効です。段階的にカフェインの量を減らしていくことで、頭痛やだるさといった離脱症状を感じにくくしながら、睡眠への影響を和らげていくことができます。
「寝酒」から卒業するための小さな一歩
寝る前のお酒が習慣になっている場合、いきなり完全にやめるのは心理的なハードルが高いものです。そこで、まずは「時間」と「量」を見直すところから始めます。具体的には、寝る直前ではなく夕食の時間帯までに飲むようにする、缶ビールなら一本をゆっくり味わって終わりにする、などです。
さらに一歩進めるなら、「寝る前のリラックスタイム」にお酒の代わりとなる飲み物を用意します。白湯やノンカフェインのハーブティー、ホット麦茶など、アルコールゼロの飲み物をマグカップに入れ、その一杯を「今日の終わりの合図」として味わう習慣に変えていきます。少し時間はかかりますが、続けるうちに「お酒がないと眠れない」という感覚は徐々に薄れていきやすくなります。
甘い飲み物・エナジードリンクを控える工夫
甘いジュースやエナジードリンクを夜まで飲んでしまう理由の一つは、「疲れているときほど手軽な甘さや刺激に頼りたくなる」ことにあります。そのため、単に我慢するだけでなく、代わりに満足感を得られる選択肢を用意しておくことが大切です。
たとえば、どうしても何か味がついたものを飲みたいときには、砂糖不使用の炭酸水や、薄めたフレーバーティー、甘さ控えめの温かい飲み物などに切り替えてみます。「完全にゼロ」にするのではなく、「夜だけは控えめにする」「寝る三時間前からは飲まない」といったルールを自分の生活に合わせて決めていくと、無理なく続けやすくなります。
ここで、よくある夜の飲み物習慣と、その中のNG行動、それに対する代替行動を表にまとめます。この表を見ながら、「これは自分に近いかも」というパターンを探してみてください。
| よくある夜のパターン | NG行動の例 | 今日からできる代替行動 |
|---|---|---|
| 仕事終わりにだらだらとコーヒーを飲み続けてしまう | 二十時以降もカフェイン入りコーヒーを飲みながら作業を続ける | 十七時以降はカフェインレスコーヒーやノンカフェインティーに切り替える |
| 寝る直前まで晩酌をしてしまう | 布団に入る直前までビールやチューハイを飲んでいる | お酒は夕食時間までに切り上げ、寝る前は白湯やノンアル飲料に変更する |
| 疲れた夜ほど甘い炭酸飲料に手が伸びる | 眠る一〜二時間前に甘い炭酸飲料やエナジードリンクを飲む | 夜は無糖の炭酸水やハーブティーに置き換え、甘い飲み物は日中に楽しむ |
| 勉強やゲーム中にエナジードリンクを常備している | 夜遅くまでエナジードリンクを飲みながら集中し続ける | 勉強やゲームは就寝数時間前までに切り上げ、後半は水や麦茶に切り替える |
この表は、「やってはいけないこと」を責めるためではなく、「代わりに何をすればよいか」を具体的にイメージするためのツールです。すべてを完璧に置き換える必要はなく、まずは一つだけ、自分に合いそうな代替行動を選んで試してみるところから始めてみてください。
ライフスタイル別・体質別に見る寝る前に避けたい飲み物と注意点
同じ飲み物でも、ライフスタイルや体質によって影響の受け方は変わります。この章では、よくあるパターン別に、寝る前に避けたい飲み物と注意点を整理します。
夜勤・シフト勤務の人が気をつけたいポイント
夜勤やシフト勤務では、一般的な昼夜のリズムとは異なるスケジュールで生活することになります。そのため、「寝る前に避けたい飲み物」も、時計の時刻ではなく「自分にとっての就寝時刻」から逆算して考えることが大切です。
たとえば、朝の七時に仕事を終えて八時に就寝する場合、深夜の時間帯は「日中」とほぼ同じ役割を果たします。それでも、就寝の四〜六時間前からはカフェインを控えめにする、勤務終了後に飲むお酒はごく少量にとどめるなど、「眠る直前の数時間は刺激物を減らす」という基本方針は変わりません。
ダイエット中・胃腸が弱い人の場合
ダイエット中の人は、寝る前の飲み物のカロリーや糖分に注意が必要です。甘いココアや加糖ミルク飲料、アルコールなどを習慣的に飲んでいると、気づかないうちにカロリーが積み重なり、体重管理が難しくなることがあります。また、血糖値の上下が大きいと、夜間の睡眠の質にも影響しやすくなります。
胃腸が弱い人は、刺激や脂肪分の多い飲み物、酸味の強い飲み物、冷たすぎる飲み物に注意が必要です。寝る前にこれらを飲むと、胃もたれや胸やけで寝つきにくくなったり、夜中に不快感で目が覚めたりする原因になり得ます。その場合は、白湯や常温の水、穏やかな風味のノンカフェインティーなど、シンプルで刺激の少ない飲み物を選ぶ方が安心です。
子ども・学生・高齢者の場合の配慮
子どもや学生、高齢者は、大人以上に飲み物の影響を受けやすい場合があります。小中学生が夕方以降にカフェインや糖分の多い飲み物を摂り続けると、夜更かしや朝の寝坊につながりやすく、学習や生活リズムに影響を与えることがあります。
高齢の方の場合は、夜間のトイレ回数が増えやすくなっていることも多いため、寝る前の水分量や利尿作用のある飲み物(カフェイン・アルコールなど)に特に注意が必要です。また、持病や服薬状況によって推奨される飲み物が異なる場合もあるため、不安がある場合は必ず主治医に確認するようにしましょう。
専門機関への相談を検討したい目安
ここまで解説してきた内容は、あくまで生活習慣や環境を整えるための一般的な情報です。寝る前に避けたい飲み物を意識しても、睡眠の不調が強く続く場合には、セルフケアだけで抱え込まず、医療機関や専門家に相談することが大切です。
生活改善をしても睡眠の不調が続く場合
寝る前の飲み物やカフェイン・アルコールの量を見直し、寝室環境や生活リズムも整えようと努力しているのに、数週間から数か月たっても以下のような状態が続く場合は、一度受診を検討してみてください。
布団に入ってから一時間以上眠れない状態がほとんど毎日続いている。夜中に何度も目が覚め、その後なかなか眠れない。朝早く目が覚めてしまい、そのまま眠れない。睡眠時間はそれなりに取っているのに、日中の強い眠気やだるさが続いている。
こうした状態の背景には、ストレスや生活習慣だけでなく、身体や心の病気が隠れている場合もあります。自己判断で「きっと飲み物のせいだ」と決めつけず、専門家の視点を借りることで、より適切な対処方法が見つかることがあります。
日中の眠気やメンタルの不調が強い場合
睡眠の質が落ちた状態が続くと、日中の集中力低下や判断力の低下、ミスの増加などにつながることがあります。特に、仕事で車を運転する方や、重機・機械を扱う方にとっては、安全面からも大きな問題です。
また、「気分が落ち込んで何もする気になれない」「不安やイライラが強くて眠りたくても眠れない」「朝起きると絶望感が強い」といったメンタル面の不調を感じる場合は、睡眠と心の両方の観点から、心療内科や精神科などの専門機関への相談を検討したいサインです。
受診するときに伝えておきたい情報
受診する際には、寝る前に避けたい飲み物の見直し状況も含めて、普段の生活の様子を可能な範囲で整理しておくと、医師が状況を把握しやすくなります。具体的には、就寝・起床時刻、寝つきまでの時間、夜中に目が覚める回数、一日に飲むカフェイン飲料やアルコールの量、寝る前の飲み物の内容と時間帯などです。
すべてを完璧に記録する必要はありませんが、二〜三日分でもメモしておくと、診察の際にスムーズに説明しやすくなります。医師から提案された対処法や治療方針については、不安や疑問があれば遠慮なく質問し、納得したうえで進めることが大切です。
寝る前に避けたい飲み物に関するよくある質問(Q&A)
ここからは、「寝る前に避けたい飲み物」に関してよく寄せられる疑問を、Q&A形式で整理します。気になるところだけ読んでいただいても構いません。
Q1. 寝る前にコーヒーを飲んでも、すぐ眠れているなら問題ありませんか?
A. 寝る前にコーヒーを飲んでもすぐ眠れているように見えても、睡眠の深さや質に影響している可能性はあります。朝の目覚めが悪い、日中に強い眠気を感じる、週末に寝だめをしてしまう、といったサインがある場合は、実は睡眠が浅くなっているかもしれません。一度、二〜三週間ほど夕方以降のコーヒーを控えてみて、体調や目覚めの変化を観察してみると、自分にとっての影響度合いがつかみやすくなります。
Q2. デカフェやカフェインレス飲料なら、寝る前に飲んでも大丈夫ですか?
A. 一般的なコーヒーやお茶に比べると、デカフェやカフェインレス飲料は寝る前に飲みやすい選択肢と考えられます。ただし、商品によっては少量のカフェインが残っている場合もあるため、カフェインに敏感な人は様子を見ながら取り入れると安心です。また、夜のリラックスタイムには、白湯やノンカフェインのハーブティーなど、より刺激の少ない飲み物と組み合わせていくと、睡眠への影響をさらに減らしやすくなります。
Q3. 少量の寝酒なら、むしろストレス解消になって良いのでは?
A. お酒がリラックス感をもたらし、ストレス解消に役立つと感じる人もいるかもしれません。ただし、寝る前のお酒は、たとえ少量でも睡眠の質を下げる方向に働くことがある点は知っておきたいところです。また、ストレス解消の方法がお酒に偏りすぎると、量が徐々に増えていったり、「飲まないと眠れない」と感じるようになったりするリスクもあります。リラックスの手段としては、ぬるめのお風呂、ストレッチ、深呼吸、音楽など、飲み物以外の選択肢も一緒に育てていくことが大切です。
Q4. 子どもが夜にジュースや炭酸飲料を飲みたがります。どの程度までなら許しても良いでしょうか?
A. 子どもの場合も、大人と同様に、寝る前の糖分やカフェインは睡眠の質に影響しやすいと考えられます。毎晩、寝る直前まで甘いジュースや炭酸飲料を飲む習慣があるなら、少しずつ時間帯を早めたり、量を減らしたりしていくことを検討したいところです。夕食までに楽しむ分には、全体の食事バランスや歯磨きなどと合わせて調整しやすくなります。どうしても何か飲みたいときには、寝る前は水や薄めのお茶など、刺激の少ない飲み物に切り替える習慣づくりを親子で一緒に試してみてください。
Q5. 寝る前に水分を控えすぎると、脱水が心配です。
A. 水分不足は確かに避けたいものですが、日中からこまめに水分をとっていれば、寝る直前に大量の水を飲む必要はない場合がほとんどです。夜中のトイレで何度も起きてしまう方は、寝る前の一〜二時間はマグカップ半分〜一杯程度にとどめるなど、時間帯ごとのバランスを見直してみてください。心臓や腎臓などに持病がある場合は、水分のとり方について必ず主治医に確認するようにしましょう。
用語解説
ここでは、本文中に出てきた用語をあらためて整理しておきます。専門的な内容ではなく、日常感覚で理解しやすいレベルでまとめています。
カフェインとは、コーヒーや紅茶、緑茶、エナジードリンクなどに含まれる成分で、眠気を感じにくくさせたり、集中力を高めたりする作用があるとされています。日中には便利な一方で、寝る前の時間帯には睡眠の質を下げる可能性があります。
体内時計とは、体が「今は昼か夜か」「活動するときか休むときか」を判断するための内部的なリズムのことです。光や活動量、食事の時間、飲み物の影響などによって調整されており、睡眠や体調に深く関わっています。
自律神経とは、心臓の鼓動や呼吸、消化、体温調節などを自動的にコントロールしている神経の仕組みです。活動モードの交感神経と、休息モードの副交感神経のバランスが崩れると、眠りに入りづらくなったり、疲れが取れにくくなったりすることがあります。
中途覚醒とは、眠っている途中で何度も目が覚めてしまうことを指します。トイレに行きたくなる、夢見が悪い、音や光に反応してしまうなど、原因はさまざまですが、睡眠の満足感を下げる要因になりやすい状態です。
睡眠の質とは、単に睡眠時間の長さだけでなく、寝つきのスムーズさ、中途覚醒の少なさ、朝の目覚めのすっきり感などを含めた、眠り全体の満足度を指す言葉です。同じ時間眠っても、習慣や環境によって質は大きく変わります。
まとめ|全部を完璧にやらなくていい。まずは一つ「やめる飲み物」を決めてみる
この記事では、寝る前に避けたい飲み物をテーマに、その原因、具体的なNG飲み物と理由、現実的な対策方法、ライフスタイル別の注意点、専門機関への相談の目安、そしてよくある質問までを一通り解説してきました。
あらためて重要なポイントを整理すると、第一に、寝る前に避けたい飲み物の代表はカフェイン飲料・アルコール・糖分や刺激の強い清涼飲料であり、これらは寝つきだけでなく眠りの深さにも影響しやすいということです。第二に、問題は単発の一杯だけでなく、「いつ・どれくらい・どのくらいの頻度で飲むか」という習慣の積み重ねであり、夕方以降の飲み方を見直すことが睡眠の質改善につながりやすいという点です。第三に、代わりとなる飲み物や過ごし方を用意しながら、少しずつ変えていくことで、無理なく続けられる睡眠習慣に近づきやすくなるということです。
そして何よりお伝えしたいのは、全部を完璧にやらなくていいということです。コーヒーもお酒もジュースも、急に全部やめようとすると、かえってストレスが増えてしまいます。それよりも、まずは一つだけ、「寝る前にはやめてみようかな」と思える飲み物を選んでみてください。
たとえば、「今週だけは、二十時以降のコーヒーをカフェインレスにしてみる」「寝る直前の缶チューハイを、夕食時の一杯に変えてみる」「夜の甘い炭酸飲料を、無糖の炭酸水や白湯に置き換えてみる」など、小さな一歩で十分です。その一歩を一〜二週間続けてみて、朝の目覚めや日中の眠気、気分の変化をゆっくり観察してみてください。
変化が感じられたら、それはあなたの体からの「その方向で合っているよ」というサインかもしれません。もし変化が乏しければ、別の飲み物や時間帯に目を向ければよいだけです。試行錯誤を重ねながら、あなた自身の体にとって心地よい「寝る前の飲み物との付き合い方」を見つけていきましょう。
今日の夜からできる一歩として、まずは一つ、寝る前に避けたい飲み物を決めてみてください。それが、明日の目覚めを少しだけ軽くするスタートになるはずです。

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